新型コロナウイルスの影響で、すでにリモートワーク(在宅勤務、テレワーク)をしている人もいるでしょう。会社に行かなくても、実際に仕事ができることを知ってしまった日本人にとって、こうした働き方のスタイルが、くしくもコロナの影響によって促進されるのではないでしょうか。


しかし一方で、リモートワークへの弊害も出てきています。とくにリーダーにとっての悩みの1つに、「コミュニケーションがとれず、リモートワークをする部下のモチベーションを上げづらい」ことが挙げられます。


そこで大切になってくるのが、部下への声掛けです。


欧米では、リーダーの仕事は部下のモチベーションを上げて生産性を高めることが常識で、できるリーダーは常に部下への声掛けを怠りません。


そんな声掛けに、アメリカで生まれた話術「ペップトーク」というものがあります(ペップとは英語で活力、元気の意味)。ー容、⊂鞠А↓9堝亜↓し穃紊箸いΓ瓦弔離汽ぅルを使って、1分ほどで人のやる気に火をつける話術です。


日本ペップトーク普及協会の専務理事、浦上大輔氏の著書『実践!ペップトーク』では、ある企業のリーダーが、このペップトークを使ってチームをまとめた話が掲載されています。コミュニケーション不足に陥っているリーダーに参考になるかもしれません


『実践!ペップトーク』Blog.

言葉が変わって周りが変わったという、実際にペップトークを実践してチームが変わったお話があります。


Kさんは東京のITサービス会社の制作・マーケティング部の部長です。社員8人のころに入社、上場を目指す会社は急成長し今ではスタッフは30人。営業部が受注した仕事をマーケティング部が企画、制作部がデザインし、開発部のエンジニアにプログラミングしてもらうという仕事の流れです。


急成長しスタッフの人数も増えていく中、コミュニケーションがうまくとれず、部署間で責任の押しつけ合いが起き始めていました。


営業部は無茶な仕事をどんどん受注してきたり、マーケティング部が実現可能かをあまり考えず勝手に新しいキャンペーンを企画したりすることに対し、開発部の職人気質のエンジニアは納得がいくものをつくりたいと対立が起こります。空気感も悪く、ほかの部署が失敗すればいいのにと、足を引っ張り合うような気持ちにもなってしまいます。


職人気質のエンジニアの機嫌を損ねてはいけないと、社内では他人行儀な言葉でお願いすることもありました。会社の業績は絶好調、しかし中身はギスギスしている状態だったのです。


実はKさんはもともとネガティブな言葉をついつい使いがちなプッペトーカーでした。そして前職での苦い経験がありました。自分たちで立ち上げた会社が9・11の同時多発テロによる不況のため業績が悪化、その際、Kさんは同僚を責めて鬱状態にさせてしまったのです。


結果的に、その同僚は立ち直ったのでよかったのですが、今度はKさんが会社の雰囲気を悪くしたということで責められ、ついには会社から追い出されてしまったのです。


そんなことを思い出す中で、ペップトークに出会いました。


Kさんはペップトークを実践し、自分のチームに活かそうと考えました。それぞれの部署で思いを持って仕事をしている、でもその思いをつなぐコミュニケーションが必要だと考えました。


実はかなり多くの時間を一緒に過ごしているにもかかわらず、メンバー同士、人となりを知らずに仕事をしていることを感じていました。お互いをもっと理解し、承認し、お互いの可能性を信じ合えるチームにしたい……そんな思いからチーム内のコミュニケーションを円滑にし、業務の相談をする定例ミーティングを企画したのです。


最初はスタッフも「このミーティング意味あるの?」というような雰囲気でした。


そこで第1回定例ミーティングのオープニングをペップトークで始めてみようと決めたのです。ペップトークを考える中、ふと「家族のようなチーム」という言葉が浮かびました。


「そうだ! 合言葉は家族のようなチームにしよう!」


そしていよいよミーティング当日。Kさんはまずはペップトークする自分にセルフペップトークをしました。


❶受容(事実の受け入れ)

わかる、わかる、緊張するのわかる。


❷承認(とらえかた変換)

それって新しいことにチャレンジしているし、過去のパターンを変えたいんだよね。


❸行動(してほしい変換)

カッコ悪くても笑われても大丈夫。目の前の人に届けていこう。


❹激励(背中のひと押し)

どんな結果になっても励ましてくれる仲間がいる。可能性を信じてくれる仲間がいる。


そしてミーティングは、次のペップトークで始まりました。


❶受容(事実の受け入れ)

今、会社が大変な状態で、みんなも正直しんどいことがあると思う。


❷承認(とらえかた変換)

でも、それってみんなが本当にいい仕事がしたいっていうことだよね。


❸行動(してほしい変換)

みんなの考えていること、感じている課題をもっと共有しよう。


❹激励(背中のひと押し)

家族のようなチームにしよう。


このペップトークから始まったミーティングは、回を重ねるごとに徐々に盛り上がっていきました。Kさんはミーティングのオープニングトークとエンディングトークとしてペップトークを実践したのです。


そしてまだまだKさんの挑戦は続きます。


「家族のようなチーム」という合言葉を実践しようと、ミーティングの中で最近うれしかったことなど毎回テーマを設けてメンバーがシェアするようにしました。


すると「最近、マウンテンバイクを買ったんだってね。実は僕も自転車好きなんだよ」「娘さんが熱出してたの治った?」など、以前よりもお互いに世間話をするようになり雰囲気が変化していきました。


また時には「山田さんって、仕事がとても丁寧だと思います」「佐藤くんって、笑顔が素敵だなって思います」「渡辺さんが、この前プログラムでわからないところを解決してくれて助かりました」というように、お互いの良いところや貢献を承認し合うワークをやってみました。


最初は照れ臭そうにしていた職人気質のメンバーたちが、自分のこだわりのポイントを言ってもらったり、自分では当たり前だと思っていたことが仲間に感謝されていることに喜びを感じ、自分自身にも、自分の仕事にも自信を持ち始めたのです。


Kさんが週1回のミーティングを続けた結果、メンバーが自発的に月1回、チームで懇親会を企画するようになりました。やはりそこでの話題もお互いの貢献を承認し合う会になったのです。


この取り組みを行った結果、チームが変化しました。営業部から無茶ぶりされた時、以前なら舌打ちしてやりたくなさそうにしていたメンバーたちが、主体的にみんなでどうやってこの依頼に取り組むか、どうやってみんなでサポートし合えるかを話し合うようになりました。


フランクに相談し合える雰囲気になったことで、今までなら自分ひとりで抱えていた仕事をプログラミング、デザインなど得意な人に任せるようになりました。さらに営業部との連携も良くなり、新たなサービスをつくって会社の成長がグッと加速したのです。


Kさんはこの取り組みを通して、言葉の力という心強い武器を身につけ、リーダーとしての自信がついたと言います。


ビジョンを描いて、目標を掲げて、マネジメントしながらチームを引っ張っていくリーダーから雰囲気づくりに徹することで、メンバーの力を引き出すリーダーになればいいんだとリーダー像自体が変わったのです。


そして、メンバーの貢献を言葉にして指摘すれば、チームのパフォーマンスが上がるという確信を得たのです。


Kさんは、日々こんな言葉でメンバーをペップしています。


「〇〇さん、めっちゃ早いね! そのまま開発部の△△さんに送ったら超喜ぶよ。そ


のスピード感、〇〇さんめっちゃ助かるよ」


「その冗談、めっちゃ好きだわ、君がいるだけで場が和むよ」


「わかるよ、無茶な仕様変更にイラッとくるのわかるよ。大事にしていた部分が台なしになっちゃうもんね。いいものをつくりたいという思いが××さんのいいところだもんね」


Kさんになぜリーダーとして変わることができたのかを聞いてみると、彼は笑顔でこう答えました。


「昔はリーダーとしてどう声かけをすればいいか知らなかった。でも今は知っています。でも、知っているのとやっているのとは違う。たしかに変わるのは誰でも怖いものです。でもこのまま変わらないまま未来にいくのか? それとも今変わるのか? 


と自分で質問したら後者が答えとして浮かんできました。バンジージャンプは飛ぶ瞬間が一番怖いけど、飛んだら飛んだでなんとかなるものなんです」


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『実践!ペップトーク

(浦上大輔・著/岩由純・監修/一般財団法人日本ペップトーク普及協会・監修)

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