まえがき より

私が本書であなたに伝えたいことは大きく2つあります。

1つは、この20〜30年のあいだに、ヒトの身体と精神が
ともに進化の産物であるという観点に基づいた研究が成果を上げ、
ヒトに対する理解が大きく深まっていることです。

もう1つは、そうして解明されたヒトに関する知見を応用して、
社会的課題を改善する取り組みが始まっていることです。

第1章では、ヒトの心理や行動を理解するうえで
進化の観点が有効であることを述べていきす。

ヒトの心理や行動には
進化的適応の結果としての偏り(バイアス)があります。

こうした表現をなるべく正確に理解していただけるように、
生物進化のプロセスとメカニズムについての基本、
進化心理学、人間行動進化学、自然主義の誤謬、
社会生物学論争などの知見について解説します。

第2章のテーマは宗教です。
ここでは人間行動進化学に基づいた宗教研究を紹介し、
さらに近年注目されているマインドフルネスについても解説します。

遺伝学や進化学という自然科学の立場からの宗教研究とは、
いったいどのようなものなのか、代表的な研究例について、
心理測定尺度などの研究手法も含めて解説します。

第3章は社会的課題を解決する取り組みの紹介です。
近年、社会的課題の解決において行動経済学が注目されていますが、
その基盤には進化生物学があることを述べます。

ジェンダー格差(女性差別)の是正という社会的課題に関して、
成果が確認された先進事例を取り上げ、
行動デザインを活用したアプローチがどのように実施されたのかを紹介します。

第4章は同性愛についてです。
同性愛に関する遺伝的研究に加えて、
同性愛のパラドックスに関連した研究を紹介します。

さらに、同性愛者に対する差別や人種・性別による差別など、
ヒトには集団間の序列を肯定する傾向があるとする社会的支配理論を紹介します。

第5章は進化医学の紹介です。
ヒトの進化の歴史を概観したうえで、
ヒトの進化と現代の環境のミスマッチという観点から、
さまざまな種類の病気について解説します。

また、うつ病の症状は一種の防御反応であり、
適応的な性質であるという可能性について紹介します。

第6章では、人間行動進化学や行動経済学の研究成果が、
教育現場や医療現場など、さまざまな領域で
活用され始めていることを紹介します。

さらに、工学や人工知能が生物進化のプロセスやメカニズムを
模倣することで発展してきたことも述べます。

宗教・同性愛・ジェンダー格差(女性差別)は
近年、日本で話題となりました。

これらはいずれも、人間行動進化学の観点に基づくことで
興味深い知見が得られるテーマであり、
本書で取り上げることとしました。

本書で紹介した研究の関連分野は、
医学・教育・工学など多岐にわたります。

広範な領域で人間行動進化学の手法や進化という観点が
活用されていることがおわかりいただけるでしょう。

今後、人間行動進化学の知見を応用して社会的課題を改善する時代が
本格的に到来することが期待されます。

本書では、そうした取り組みの先進事例を紹介していきます。



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『社会はヒトの感情で進化する』
(小松 正・

 
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