まえがき

かつて私は、
寄生虫の一種であるサナダムシを6代にわたり、
15年間自らの腸の中に飼うという実験を行っていました。

その理由は、寄生虫による
アレルギー抑制の機序(メカニズム)を明らかにし、
それを証明したかったからです。

医学界からの反響や反発はとても大きかったのですが、
このことから私は「寄生虫博士」と呼ばれるようになりました。

初代のサナダムシには、
サトミちゃんという名前をつけました。

2代目はヒロミちゃん、3代目がキヨミちゃん、
4代目がナオミちゃん、5代目がカツミちゃん、
最後の6代目がホマレちゃんです。

よく、
「サナダムシたちの名前の由来は何ですか?」
「かつて先生が好きだった女の人の名前ですか?」
「ずいぶんいらっしゃいますね……」などと聞かれますが、
残念ながら違います。

答えは、サナダムシは雌雄同体なので、
イチローとかハナコのような、
性別が明確に分かれているような名前はつけられないのです。

つまり「ゴウヒロミ」のように、
男でも女でも使える名前を選んで命名したのでした。

サナダムシなどの寄生虫をはじめ、
カタツムリ、ナメクジ、ミミズ、アメフラシなど、
生物界を見渡すと、
雌雄同体の生き物はけっこう多く存在しています。

雌雄同体の中にも、オスになったりメスになったりと、
ひとつの身体で自由自在に性を転換できる生き物もいるのです。

このように、オスとメスの個体が
必ずしも存在しなくても繁殖できる生物がいる一方で、
人間のように「男」と「女」の
性差を有する生物がいるのはなぜでしょう。

私はこのことを昔から不思議に思っていたのですが、
みなさんは考えてみたことがありますか?

自らの若い頃を思い出しても、女性に関しては、
思いどおりにいかなかった苦い経験ばかりです
(端的に言えば、女性にモテる男友達を
遠くから指をくわえて見ていただけということですが)。

好きな異性のことを考えていると、
夜も眠れなくなるし、カッコつけなければならないし、
オシャレもしなければなりません。

失恋をしてしまえば、悲しくて何日も落ち込んだり、
食欲がなくなったり過食したりと、精神的に大打撃を受けます。

悩みや面倒が多くなって煩わしいはずなのに、
この世には「男」と「女」が存在するのです。

これらのことをいくら考えても
一向に答えは出てきませんでしたが、
改めて生物界から「男」と「女」を俯瞰
することで、見えてきたことがありました。

それは、性差があることで、
いろいろな物語が生まれてくることです。

私たち人間でも、
男女のお付き合いや恋愛の駆け引きなどの話は、
雑誌やバラエティー番組などでも多く取り上げられるように、
みんなが大好きなトピックです。

しかし人間に限らず、昆虫や鳥類や動物でも、
オスとメスの間に繰り広げられる不思議な物語があるのです。

特に「オス」に注目してみると、
何と残念な生き物なのだと思わせる物語がたくさん出てきます。

単独では子孫を残すことができない「オス」の
必死な行動や悲哀の先には愛おしさがあり、
やはり「男」と「女」の存在は、
地球上の生物が進化するうえでの
素晴らしい戦略だったと思わざるを得ないのです。

ここ最近になって、やっと多様性について
議論される世の中となってきました。

性別はどうして存在するのだろう、
という疑問や好奇心がそれぞれの性差の存在を
認めることにつながり、多様性を受け入れる
きっかけになるのではないかと感じています。

本書がその一端にでもなれば、
著者として大変嬉しく思います。
残念な「オス」という生き物
『残念な「オス」という生き物』
(藤田紘一郎・著)

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