日本経済改善の数字が示す「アベノミクス」の成功  

私は、2018年は東アジア情勢に激変が起こる
最初の年になるだろうと想定しています。

しかし、日本人の大多数にとって、
激震が起きたという実感を抱くことはないかもしれません。

その理由は、これまで安倍政権は
そうした激震への備えを着々と進めてきた結果、
いざというときに慌てふためく必要のないことが大きいでしょう。

また、国民からの支持という点で
安倍首相にはアベノミクスの成功という強みがあります。

相変わらずアベノミクスに批判が向けられたり
「失敗」の評価が下されたりしているものの、
じつは成功を示す好調な統計データや数字が相次いでいます。

これらは本書で展開する経済予測の
基礎データのようなものですから、
先に掲げておきましょう。
 
これをひと目眺めればわかりますが、
日本経済はすさまじい改善ぶりです。  

5年前と比べて日経平均は2・7倍に大きく上昇し、
ドル・円レートは40%以上の円安、 
有効求人倍率も2倍に迫るような伸びを示しています。

GDPでは2012年10‐12月と2017年4‐6月との比較で
10・7%の伸びで、492兆8000億円が545兆4000億円に
およそ53兆円も増えました。  

また、国債利回りや日銀短観の業況判断を見ても
改善は著しいし、需給ギャップも2016年10‐12月期から
3四半期連続でプラスを記録。

日銀はこうした経過を受けて、
物価が目標とする2%に向けて上昇していくと見ています。

もちろん企業は収益性を大幅に高めていますし、
それを示すはっきりとした数字も出ています。

たとえば、連結経常利益というのがあります。

2012年10‐12月期の連結経常利益は
49兆7000億円でしたが、
直近の2017年4‐6月期には84兆5000億円へと
70%も増加しました。

日本企業の収益率は、
たいへんな勢いで上がっているわけです。  

その企業収益率の伸びがまた、
雇用者の大きな伸びにつながっています。
 

景気回復は目に見える形で、 あらゆるところに出現している
 
それならば、アベノミクスで
日本人の生活にいいことはあるのでしょうか。

ことここへきても、
「安倍政権は株価を吊り上げただけだ」
「景気回復の実感はない」という人は少なくありません。

しかし、いいことは現実にうんと起こっています。  

まず、自殺が減りました。

1990年代から2000年代にかけては、
年間自殺者数が3万人以上の時代がつづきました。

それが2016年は、7割以下の2万1897人です。

2017年はさらに減っており、
自殺者の総数は年間2万人を切るのではないかと言われています。

市井(しせい)の人が自殺する理由は、
そのほとんどが経済苦です(男性7割)。

ですから、自殺者数がかつての
7割以下に減っているということは、
すなわち貧しい人が減ったということにほかなりません。

「お金がない」「仕事がない」という閉塞状況が
アベノミクスによって打開されたわけです。  

ほかにも、タクシーの輸送人員の増加、
高速道路の通行台数の増加、犯罪数の減少など、 

アベノミクスの成功で
国民生活にかかる負荷が軽減していることを
示すデータはいくらでも見つかります。  

地方経済は相変わらず土砂降りだと言っていたのは
つい1、2年前のことです。

ところが、いまでは大都市圏は言うにおよばず
地方の小さな市や郡部においても、立地企業から
「人手が足りない」という声が聞こえてきます。

じっさい、空き地だった工業団地に新しい工場が建ち、
雇用が増え、技能実習などで働きにやって来る
外国人の姿も目立つようになりました。

すると、需要を見込んで新規にアパートを建設したり、
スーパーマーケットやショッピングセンターを
開業したりする動きも活発化します。

そうやって雪だるま式に雇用が増える好循環が
全国津々浦々で起こり始めています。
 
民主党政権の学費無償化で高校に通った若者たちの多くは、
今回の衆議院選挙で自民党に投票しました。

このことは、彼らが就職難からの解放を
どれだけ待ち望んだかをよく示しています。

高校授業料の無償化はありがたいことだったでしょうが、
それはあくまで親の財布のことでしかありません。

本人たちにとっては、がんばって勉強しても
就職の当てがない状況のほうがよほど深刻だったのです。

ことほど左様に、アベノミクスは
若年層の政治意識を活性化させました。

逆に、いまの自民党は、かつての自民党にはなかった
支持層の広がりを持つ政党に生まれ変わっていると言えます。

かりに北朝鮮の体制崩壊が起こり、
難民が押し寄せるような事態が発生すれば、
若者たちを中心にした安倍首相の支持率はさらに上昇し、
政権基盤はより強化される状況が予想されるでしょう。


「いざなみ景気」と質を異にする「アベクロ景気」  

これほど成功したアベノミクスに対する
評価がパッとしない理由は、どういうわけでしょうか。

第一生命経済研究所経済調査部の熊野英生氏は、
2017年9月7日に発信したレポート
「実感なき景気拡張期は続く」で、
この点を非常にうまく抽出しています。

彼がたどり着いた結論とロジックをかいつまんで紹介しておきます。

アベノミクスによる景気拡張期は、
「いざなぎ景気」の57ケ月を超え、
本書を執筆している10月末時点で59ケ月におよんでいます。

戦後で一番長い拡張期は、
2002年1月から2008年2月の「いざなみ景気」で、
これは景気拡張期が73ケ月間つづきました。  

アベノミクスによる景気拡張期は、
いまのところ戦後2番目に長いわけですが、

熊野氏の問題意識は、
景気実感の乏しさの理由を探ることで、
今般の景気拡張期がどの程度つづく可能性を
持つかを明らかにすることです。

熊野氏は安倍首相と日銀の黒田総裁の名前をとって、
現在の景気拡張期を暫定的に「アベクロ景気」と呼ぶのですが、
レポートでは次のように述べています。

《なぜ、実感に乏しいかという理由を探っていくと、
いくつかの仮説を考えることができる。

まず、実質・名目GDPの成長率では差がはっきりと表れないが、
企業の売上の伸び率でみると、今次景気拡張期、
アベクロ景気は伸び率が緩やかである。

財務省「法人企業統計」の年報で、
2013~16年度の前年比を平均したものは1・5%しかない。

最近の企業の売上が伸びたのは、
2013年度2・5%、2014年度2・7%が高かった。

これに対して、いざなみ景気の2002~07年度は
売上の伸びの平均が2・9%もあった。

各年度の売上では、
2004年度6・4%、2005年度6・2%と
今考えると驚くほど高かった。

当時は経常利益の伸びはそれほど高くないが、
今よりも景気実感は良かったように思う。  

アベクロ景気の下では、売上が伸びなくても、
経常利益が伸びている。

そうした状況が逆に景気実感にはマイナスなのであろう。

例えば、いざなみ景気のときよりも、
アベクロ景気のほうが労働分配率は低い。

設備投資が抑制されて、減価償却の負担が少ない。

設備投資が増えていないことは成長にはマイナスだった。

経常利益にはプラスになる。》
 
要するに、アベノミクスの下で実質賃金が下がりつづける中、
2014年4月の消費税率の引き上げで個人消費は冷え込みました。

企業の売り上げが伸びなかったのは自然な結果で、
これでは国民が景気拡大実感を得られないのは
当たり前と言わなくてはなりません。

とはいえ、そのいっぽうで
企業が着々と収益を拡大してきたのが、
アベノミクスの大きな特徴です。

熊野レポートは次のようにつづきます。

《景気が腰折れしなかったのは、
企業収益が厚みを増して外部環境の悪化に対して
「打たれ強い」体質になってきたからだ。

売上高経常利益率が上がり、
収益拡大の裾野は中小企業まで広がる。

そこには前述の人件費・減価償却費の抑制が効いていた。

原油価格が低かったことも貢献した。

また、雇用面では2013年頃から雇用拡大が進んで、
完全雇用へと近づく。

賃金は上がりにくくても、雇用数量が増えるという
ワークシェアリングの状態である。

企業にとっては、収益が厚いとリストラをしなくても済むので、
それが失業者を減らした。

賃金が上がらないことは、景気実感にはマイナスであっても、
企業が安心して雇用数量を増やす傾向を後押ししたのだろう。

アベクロ景気が長持ちしていることは、
企業のダメージコントロールが雇用悪化を通じて
マクロ景気を極端に落ち込ませなかったことがあると筆者はみている。》
 
熊野氏の指摘どおり、
企業収益の厚さと低賃金が失業者を減らしているし、
たとえばチャイナショックなどが起こっても
雇用の縮小が回避される形になっています。

そして、雇用が失われないから落ち込みもなく、
売り上げの伸びとしてはたいへん緩やかな
アベクロ景気の推進力になっているというわけです。

熊野氏の結論は、
だからアベクロ景気は景気拡大実感を伴わないが
ゆえに簡単に終わることなくつづいていく、
ということです。
 
じつは私も、
以前から同じような考えを持っていました。

非常に皮肉なことですが、
景気拡大の実感が乏しいということ自体が、
景気拡大がつづく理由になっている。

だから、世の中が好景気に沸くまで、アベノミクスは
何だかんだと不評にさらされながらもつづいていく。

もちろん安倍政権が長期政権であることが大前提ですが、
私はそのように考えてきたわけです。

熊野氏の見立てに従えば、
これから来年前半くらいまでの間は賃金が伸びない、
売上高 増加に勢いがない、だけど収益が厚いから
企業はリストラをしないという状態がつづくでしょう。

そうすると、2018年央や2018年いっぱいくらいの間は、
アベノミクスの景気拡大がほぼ確実につづいていくのではないでしょうか。  

私が講演などで、
「アベノミクスの円安、株高はそうそう簡単に終わりませんよ」
と言っているのは、前記の理由が大きいわけです。

今回の景気拡大はいざなみ景気の73ケ月を超える公算大、
と私は考えています。
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(今井 澂・著)


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