巨人の肩の上で問題を解く

我々が生きる世界には、
人間が生み出した創造物が溢れている。

建造物や機械のような目に見える物体はもとより、
学校教育のような制度、そこで享受されるさまざまな知識、
知識を伝達する書物やそれを生み出す印刷などの技術、

そして文字や言葉自体も、
人間がつくり出し継承してきたものであり、
すべてが何らかの問題解決の成果である。

つまり我々は、
過去の問題解決者がつくり出した〈未来〉に生きている。

1つだけ身近な例をあげよう。

ウィリアム・フェルプス・イーノ
(William Phelps Eno、1858-1945)の
名を知る人は今日では多くない。

その著作を読んだ人となれば、もっと限られるだろう。

しかし彼が立案した問題解決の成果を
知らない人は少ないはずだ。

「交通安全の父」として知られるこの人物は、
世界で最も早く交通渋滞が生じたニューヨーク市で生まれ育った。

彼は成人し、道路交通に関わる諸問題の解決に取り組んだ。

交通信号や一方通行や歩行者のための安全帯などが、
彼が提案し、実現した問題解決の成果である。

重要なのは、イーノが問題解決に成功したことだけではない。

彼は、それまで多くの人々が「問題」として捉えなかった、
言い換えれば、不都合ではあっても解決すべきものとは
受け取られていなかった交通渋滞や交通事故を、
改めて「問題」として捉え直した。

イーノ自身に力が足りず、あるいは機会に恵まれず、
それら問題のすべてを解決できなかったとしても、
その後に続く解決の努力を導くよう課題(アジェンダ)を設定し、
それによって世界を変えたのだ。

イーノの名は忘れられても、
彼の努力は、今も我々の世界の一部となっている。

もちろん、こうして今もはっきりと
その姿を残している問題解決の成果ばかりではない。

ほとんどの問題解決の成果は今では
跡形もなく消えてしまっているだろう。

しかし、形を失ったとしても、継承は消えた訳ではない。

より優れた問題解決の成果に置き換えられたとしても、
後から生まれた問題解決の前提となり、礎となったのである。

問題解決の登場を準備したのは、
より以前に試みられた問題解決への挑戦なのだ。

問題解決の技術が〈方法を生み出す方法〉であることは、
単に未来の問題に開かれているだけでなく、
未来へとその方法を受け渡し、

また過去の問題解決を継承する者として
問題に挑むということでもある。

これが、本書が過去の問題解決から
方法と知恵を汲み取ろうとする理由である。

幸い、前著『アイデア大全』と同様
さまざまな知的営為と実践から素材を得ることができた。

おかげで問題解決や創造性研究に関わる
心理学研究やビジネスの実践はもとより、

哲学、宗教、神話、歴史、経済学、人類学、数学、
物理学、生物学、看護学、計算機科学、品質管理、
文学などに由来する技法を収録することができた。

問題解決大全

『問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール』
読書猿 (著)


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