あらゆる職場のためのストレス・ハンドブック

ストレスは現代の職場の
どこにでも見られる現象です。

ほとんどのリーダーやマネジャーは、
これまでどこかで、ストレスに苛(さいなま)れた
スタッフに出会ったことがあるでしょう。

また、ストレスが原因で
病気休暇をとっていたスタッフを、
再び戦力として組織に組み込むという
難題に直面した管理職も多いはずです。

ストレスは、個人にも企業にも何の利益もなく、
ただ大きなコストだけがかかります。

ほんのわずかな症状でも
仕事の能率を落としますし、
長期の病気休暇となれば、
どんな企業でも大きな経済的負担を強いられます。

高レベルのストレスが「ニューノーマル」

(訳者注:リーマンショック以後の
 世界経済を表す言葉。それが一般化されて、
 かつては異常と見なされていた事態が
 普通の状況になっていることを意味する)

と認識されるようになれば、
企業文化全体に幅広く影響が及びます。

本書は、ストレスに向き合う
リーダーやマネジャーの方々を中心に、
ストレスを防ぐ能力、
チームのメンバーが
ストレスに襲われたときに対処する能力、
ストレスが原因で病気休暇をとっていたメンバーの
仕事復帰を支援する能力を向上させることを
目的にしています。

こうしたスキルを磨いた方々は、
多様な事態に良い結果をもたらし、
職場をより魅力的なものに変えることができます。

また、本書では、
仕事に起因するストレスに関する知識と、
健康とストレスのあいだのさまざまな段階で役立つ
明確な指示とツールを提供します。

本書がリーダーやマネジャーを
対象としているのは、
人々の先頭に立って病気休暇を減らし、
スタッフの健康を増進するのが、
管理職であるリーダーやマネジャーに
ほかならないからです。

本書を指針にすれば、
あなたが管理するのが小さなチームであっても、
部門や会社全体であっても、
その部署の生産性と仕事の質は
大きく向上するでしょう。

本書では、
重要だが困難な、さまざまなタスクを紹介します。

ストレスを抱えていると思われる人に
対応するのは、
おそらく快適な仕事ではないでしょう。

実際、まずストレスの症状を発見すること自体が
難しいと気づくはずです。

現代の職場では個人の自由と
柔軟な働き方が重視されているので、
管理職が長時間労働や過密な業務、
行動の変化を指標にしてストレスを見極めるのは
困難です。

管理職の方々は職場復帰のプロセスでも
重要な役割を担います。

管理職の多くは、有能なメンバーが
急に脱け殻のようになって長期の病気休暇をとり、
適切な対処をしてもらえると
信じきっているのを見たときに、
自分が未知の領域に入ったことに気づくでしょう。

多くのリーダーやマネジャーが
こうした状況に不安を感じ、
チームのみんなに健康とストレスについて
尋ねてみなければならないと思うと、
少し憂鬱(ゆううつ)になるのはよくわかります。

そういう事態に対処する準備が
できていないと感じ、
問題に向き合うことを嫌う人もいるでしょう。

本書では、ストレスで苦しんでいる人を
見つけたときに何をすればいいか、
そして、行き過ぎたりプライベートな領域に
立ち入ったりすることなく
その人を助ける方法を示します。

チームのメンバーが重いストレスを抱えたとき、
多かれ少なかれ自分を厳しく
見つめ直そうとするのは自然なことです。

なぜ前兆を見つけられなかったのだろう?

To―Doリストの優先順位づけを
手伝ってほしいと言われたとき、
もっと深刻に受けとめるべきではなかったのか? 

なぜうちのチームで一番仕事のできるメンバーが、突然病欠の電話をかけてくる前に
相談しなかったのだろう?

そんなにもひどくなっていることを、
私に話す気にはなれなかったのだろうか?

そうした自問が続きます。

毎年の労働環境評価で、
自分の部門のストレス・レベルと仕事量が
また平均を超えたらどうしようか、
という不安も浮かびます。

上級管理職にプレッシャーをかけ続けられ、
自分とチームへの要求が
ますます大きくなっているときに、
部署の健康を増進するために中間管理職である
自分にできることがあるのだろうか?

私たちはこうした疑問に目を向け、
日々の仕事で活用できるツールを提供します。

本書を通じて、私たちは、
健全な精神的労働環境の創出と維持、
そしてストレスの軽減に必須(ひっす)である
3つの重要な分野に焦点をあてます。

すなわち、

(1)あなたの知識、
(2)あなたが使えるツール、
(3)あなたが管理職として運営する枠組み、

の3つです。

それに加えて、
本書では管理職であるあなたの健康にも
焦点を合わせます。

残念ながら、ストレスは管理職にとっても
大きな問題になりつつあります。

私たちは、ストレスを引き起こす要素、
ストレスの兆候、
ストレスがあなたとチームに与える影響について
説明していきます。

また、あなた自身が
ストレスの犠牲者になったときに、
ストレスが増大するのを防ぎ、
その状況に対処するツールを紹介します。

チームの健康を増進し、仕事で実績を挙げ、
大きな将来展望の見通しをもち続けたいなら、
あなた自身の精神バランスを
維持することは欠かせません。


また、ストレスについての本?

ある程度の期間、管理職を務めてきた人なら、
この問題に何らかのかたちで
時間を費やしてきたはずです。

おそらく、ストレスについてのコースや
研修会に参加した経験が
あるのではないでしょうか。

あるいは、会社が契約した
外部のコンサルタントから、
どうすればプレッシャーに対する
職場と同僚の柔軟性を高め、
ストレスが防げるかについて
アドバイスを聞く機会があったかもしれません。

きっと「新たな伝染病」などといった
センセーショナルな言葉で
ストレスを取り上げた本や業界誌や新聞も
読んでいるでしょう。

そのうえ、
なぜさらにもう1冊本が必要なのでしょうか?

答えは簡単です。

ストレスに苦しむ人々の増加を
いまだに誰も止められないでいるからです。

実際、日々の生活でストレス症状を経験する
デンマーク人の数が増加していることが
調査でも明らかになっています。

こうした事実の原因の1つに、
ストレスがまだ完全に
理解されていないことにあると
私たちは考えています。

本書では、ストレスという現象の
複雑で多面的な性質を真摯(しんし)に
受けとめます。

私たちはストレスの背景的知識と、
新しい理論的観点をあなたに紹介します。

なぜなら、ストレスについて
多くのことを知れば知るほど、
あなたの介入が成功する可能性が高くなると
確信しているからです。

本書のようなアプローチは
はじめてのものだと思っています。

このテーマで本を書くことを決めたのは、
あまりに多くの有能で才気にあふれた
スタッフやリーダー、マネジャーが
深刻なストレスの犠牲者となって仕事を休み、
長期の病気休暇に入り、
最悪の場合は二度と満足に働けなくなるのを
見てきたからです。

これは人的にも経済的にも
大きな資本の喪失であり、
防がなければならない損失です。

私たちは、最新の研究や、優れた事例、
幅広い経験から、ストレスを防ぎ、
管理するためにできることが非常に多いと知り、
自分たちが学んだことを
あなたと共有したいと考えました。

あなたのとる行動や、
問題に真正面から立ち向かおうとする意志が、
ストレスという暗号を解読し、
ストレスを悪化させて病気休暇をとる人の数を
減らすためのカギなのです。

ストレスに取り組むことは、
ストレスに苦しむスタッフにとっても、
管理職であるリーダーやマネジャーにとっても、
会社の収益にとっても大きな価値があります。

本書が対象としている読者は
あらゆるレベルの管理職であり、
リーダーやマネジャー、スタッフ自身、
そして中小企業から世界的コングロマリットに至る
さまざまな規模の民間部門や公共部門で、
知識労働や対人サービスに携わっている方々です。


衛星ナビゲーションを使う

私たちはストレスを永遠に消し去る魔法の杖を
もっているわけではありません。

あなたはストレスに出合うたびに、
それが職場に蔓延(まんえん)している場合でも
1人に限定される場合でも、
最初は自分がもっている答えよりも
多くの疑問を抱えることになります。

そこで大切なのは、
急いで「解決モード」に突き進むのではなく、
あなたとチームが時間をとって
それらの疑問をよく考え、答えを出すことです。

ストレスは複雑で捉えにくい現象なので、
本書を読むだけであらゆる疑問に対する
完璧な答えや解決策が得られると
思ってはいけません。

私たちはその複雑さの中を進んでいく方法を
提案することから始めます。

あなたとチームは、
最初はどの道を進めばいいか
わからないかもしれませんが、
答えにたどり着くルートは
どんなときでも必ず存在します。

車でAという場所からBという場所に
移動するのにカーナビを使うのと同じように、
問題解決には私たちが紹介するツールやタスクを
使いましょう。

カーナビは的確に道を教えてくれるでしょうが、
道路や走行状況に注意を払うのは
車を運転するあなた自身の役割です。

ストレスと健康に関するあなたの仕事にも
同じことが言えます。

チームのメンバー一人ひとりや、
チームにはたらく力学、
ストレスを軽減し健康を増進しようとする
あなたのリーダーシップに対する反応から
目をそらさないようにしましょう。

目的地に到達するための最善の方法は、
自分がしていることとその理由を
常に意識していることです。


本書の構成

本書は4つのパートから成り立っています。

パート1
「ストレスとは何か―
 解決に取り組む前に問題を理解しよう」では、
ストレスに対するあなたの知識と理解を深め、
ストレスに関連してはたらいている
心理的メカニズムを解説します。

伝統的な理論やモデルは飛び越えて、
その代わりにあなたとチームが直面する
実際の状況や問題に合致する現象を分析します。

また、ストレス・スパイラルを紹介し、
スタッフが助けを求めたり、
症状が悪化していくときに少し休むことが
ますます難しくなってきている理由を説明します。

さらに、本書では
チームにストレスをもたらす可能性をもった
管理職という役割にも焦点をあてます。

パート2「ストレスの階段」では、
ストレスのレベルを見極めるモデルを、
それに対処するツールとともに提示します。

ストレスは、あるかないかといった
二元的なものではありません。

ストレスと健康のレベルは常に変化していて、
程度の違いこそあれ両方が同じチームの中に
同時に存在する場合もあります。

「ストレスの階段」は、
健康とストレスのあいだの段階を
5つの階段で表したモデルです。

本書は、チームのメンバーがある時点で
どの段階にいるかを特定する方法を示し、
ストレスを防ぎ、5つの段階それぞれにおいて
ストレスに対処するツールを提供します。

パート3
「職場復帰のプロセスを成功させるために」では、
ストレスに関連した病気休暇のあとで
職場復帰しようとするメンバーを
支援する方法を示します。

これは本書で最も力を注いだパートです。

なぜなら、病気休暇と職場をつなぐ
持続可能な橋を架けるための
ツールと方法について、
管理職のみなさんから質問されることが
多いからです。

本書では、職場復帰のための
現実的で将来を考慮した計画を、
あなたとチームのメンバーが
協力して作成する方法を、
段階を追って紹介します。

とくに、その過程であなたが出合う
多くのジレンマや問題にどう対処するかについて、
詳しく説明します。

パート4「上司がストレスに襲われるとき」では、
多くの職場でまだタブーとされているテーマを
扱います。

研究によれば、管理職はストレス症状が
発現する可能性が高いにもかかわらず、
支援を求めるのが難しいと思っていることが
明らかになっています。

多くの人々が、優秀な管理職は
ストレスに襲われたりしないと
思い込んでいるからです。

しかし、本書で示すように、
ストレスを引き起こす可能性がある
プレッシャーの多くは、
管理職の役割と結びついているのです。

重要なことは、あなたが自分の状態や
潜在的なストレスの要因を意識し、
自分自身の健康に気を配ることです。

もしあなたが自分のチームの健康を守りたいなら、
あなた自身の体調が良く、
必要な精神的エネルギーを
もっていなければいけません。

本書は、あなた自身のストレスを防ぎ、
ストレスに対処するためのツールと戦略を提供し、
あなたにもし上司がいれば、
そのことをどうやって自分の上司に話すかについて
アドバイスします。

全編を通じて、私たちは、
あなたがチームのメンバーと自分自身を
助けるために講じ得る
現実的な対策に焦点を合わせています。

幸い、あなたが適切な知識とツールをもてば、
選択肢が足りないということは起こりません。

「戦略的視点に立った持続可能な労働」という
エピローグでは、あなたがストレスを防ぎ、
ストレスに対処しようとする努力の中で
出合うかもしれない問題のいくつかを解説します。

組織的な要因があなたの影響力を
妨げるかもしれません。

解決策の中には重役会議を
通さなければならないものもありますし、
組織の規範を形成する管理原則や管理手法の
包括的な見直しを必要とするものもあります。

エピローグで提供する知識は、
こうした組織的な枠組みや
自分の権限を超えた要素についての対話に、
HR(訳者注:人材管理部門)や
ライン管理職
(訳者注:部長―課長―係長といった、
 情報や指示を直属の上司や部下に直線的に
 伝達する体制の中にいる管理職。
 通常は直属の上司を指す)
を引き込むのに役立つでしょう。


著者マリーネ・フリース・アナスンと
マリー・キングストンからの謝辞

この本は、私たち2人が
素敵な夫や家族から受けた
すばらしいサポートがなければ
存在しませんでした。

また、情報を提供してくださった
多くの公共企業や民間企業に謝意を表します。

とくに、デンマーク国立労働環境研究センター
(National Research Centre 
 for the Working Environment)
は、ストレスというテーマについての
研究を行なう機会を私たちに与えてくれました。

たいへん骨の折れる仕事をしてくれた
編集者のカミラ・ローゼ・スナゴーには
感謝の言葉もありません。

大切なことが最後になりましたが、
現代の働く人々の役割と、
人々が直面する問題とジレンマ、
とくに管理職自身とスタッフのストレスに関して
洞察を与えてくれたすべての人に感謝します。

この本を読者のみなさんに捧げます。

みなさんがこの本を楽しんで読んでくださり、
この本がみなさんが行動を起こす
きっかけになることを願っています。


北欧の最新研究による ストレスがなくなる働き方
北欧の最新研究によるストレスがなくなる働き方
マリーネ・フリース・アナスン (著), マリー・キングストン (著)



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