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思いがあれば、
人はどんな逆境からでもはい上がれる

人のやる気はどこから生まれるのか、
まずはこんな話からさせてください。

私が理学療法士時代に出会い、
私の人生を変えてくれたある患者さんの話です。

みちこさんは、
北海道の大自然の中で大好きなご主人と一緒に
メロンをつくっていました。

真っ黒に日焼けして
ふくよかな笑顔が素敵な女性でした。

みちこさんは、ある日腰が痛いなと思い、
村の診療所に行ったところ、
精密検査が必要だということで、
私の勤務する札幌の病院を紹介されて来ました。

検査を受けて医師から告げられたのは、
背骨に菌が入ってボロボロになっている、
体を起こしているだけで
骨折の危険性があるということでした。

座っているのも危険な状態ということで、
本人はわけもわからず緊急入院。

5カ月間体を起こしてはいけない状態が
続いてしまったのです。

元気な人が5カ月間も寝たきりになると
どんな状態になるのか?

それはほとんど自分では体を動かせないほど
筋力が低下してしまうのです。

自分では寝返りもできないし、
頭も持ち上げられない。

わずかに動かせるのは
右の肘(ひじ)を動かすことだけでした。

当時みちこさんへのリハビリの指示は
麻痺(まひ)した足の神経に電気治療をすること。

担当の理学療法士が毎日電気を当てる治療を
行っていました。

その担当の理学療法士が
夏休みを取るということで、私が1週間、
みちこさんを担当することになったのが
彼女との初めての出会いでした。

療法士1年目の私は、最初はどんな人だろうと、
ビクビクしながら病室に向かいました。

薄暗い病室には、骨と皮しかない、
やせ細った女性が横たわっていました。

生きる希望を失い、
心を閉ざしてしまっていたのでしょうか、
話しかけても返事がありません。

――これは大変な患者さんに当たっちゃったな。

指示されたことをやって帰ろう。

私はしんと静まった病室で、そう思いました。

みちこさんに電気を当てながら話を試みますが
会話になりません。

しかしよく見ると、みちこさんは私の母親と
同じくらいの歳だったのです。

――この人が自分のお母さんだったら、
  指示されたことだけやって帰るだろうか?

――人としてできる
  ベストを尽くしているのだろうか?

――医療人として指示されたことだけでなく、
  人としてできることをやろう!

そんなふうに思った時、
気がつくと私はみちこさんの体を
さすっていたのです。

――5カ月も寝たきりだったら、
  さぞ体がだるいだろうな……。

私はいつしか、すっかり軽くなってしまった
彼女の足を持ち上げ無心でさすり続けました。

腕や背中もさすり続けました。

こうして1週間、くる日もくる日も
さすり続けたのです。

そして、私の担当期間が終わりました。

「みちこさん、明日から
 元の担当理学療法士が来ますから。
 1週間ありがとうございました。
 頑張ってください」

そう言って病室を去ったのです。

するとみちこさんは、驚くべき行動を取りました。

わずかに動く手でナースコールを押し、
看護師さんを呼んだのです。

そして、看護師さんも
今までに聞いたことがないような
大きなしっかりとした声で、
涙ながらにこう言ったのです。

「もう一度メロンつくりたいから……
 あの人と一緒にリハビリをしたい……」

それまで心を閉ざし、やる気を失い、
死を待つだけだったみちこさん。

そのみちこさんがもう一度生きようと
決意した瞬間でした。

私の本気の関わりが、
みちこさんの心に火をつけた瞬間でした。

それから背骨を金属で固定する手術を経て、
みちこさんと新米理学療法士との二人三脚の
リハビリが始まりました。

しかし、この時点で主治医からは

「みちこさんが歩くなんて絶対無理、
 いや生きて家に帰ることも難しい」、

そんなふうに言われていたのです。

私自身も体を動かす筋力がまったくない人に、
どうやってリハビリしていいかなんて
わかりません。

とにかく毎日病室に行って、
少しずつ体を起こしたり、
筋力トレーニングをいつでもできるように
ベッドサイドにトレーニング用のゴムをつけたり、
とにかくできることをやるしかない状況でした。

一方、もう一度生きようと決めたみちこさんは、
とにかく24時間リハビリに取り組み始めたのです。

3度の食事では体を少しずつ起こす練習。

しかし、5カ月間
頭を足よりも上に持ち上げていないので、
すぐめまいを起こしてしまいます。

それでもくる日もくる日も練習しました。

そして半年経ったある日、
ついに車椅子に座ることができたのです。

トレーニングで鍛えた腕で自ら車椅子をこぎ、
病室を出てナースステーションを見た時、彼女は

「この病院ってこんなふうになっていたのね」

とつぶやきました。

看護師さんが

「入院から1年も経っているのに、
 みちこさん知らなかったの?」

と言うと、

「だって検査で病室の外に行く時は、
 いつもベッドに寝たままだから
 天井しか見ていないのよ。
 そんな私が外に出られたんだからすごいよね」

と答えたのです。

この言葉を聞き、主治医、看護師、スタッフ、
みんな泣きました。

しかし、みちこさんの夢は
車椅子に座ることではありません。

そう、もう一度メロンをつくることだったのです。

「もう一度メロンをつくりたい」

「そっか、みちこさんなら絶対できるよ!
 できることからやってみよう」

知識も経験もない私でしたが、
とにかく思いを受け止めつづけました。

次に、立つためのトレーニングが始まりました。

立つための筋力をつけるために
ベッドにやぐらを組みました。

いつでも足を伸ばす
筋力トレーニングができるようにした
特別仕様です。

私が病室を覗(のぞ)くと、
いつもみちこさんは練習していました。

まさに24時間365日やっていたような感覚です。

そして、その半年後……奇跡が起こりました。

みちこさんはついに自力で立ったのです。

リハビリ室で両手でグッと手すりをつかみながら、
全身の力を振り絞って立ち上がったのです。

足がガタガタ震えていましたが、
しっかり手で支えて立っている姿が
そこにありました。

私は、その時のみちこさんの笑顔と感動が
今でも忘れられません。

みちこさんが立った……

この時点で病院内では奇跡が起こったと
言われていました。

しかし、みちこさんの夢は立つことではなく、
もう一度メロンをつくることです。

「もう一度メロンをつくりたい」

「そっか、みちこさんなら絶対できるよ!
 できることからやってみよう」

私は、くる日もくる日もみちこさんの夢を
一緒に信じつづけました。

みちこさんの可能性を信じつづけました。

そしてさらに半年後、
みちこさんは自力で歩くことができるようになり、
自宅に帰ることができたのです。

緊急入院から、
すでに2年半の月日が経っていました。

みちこさんが退院してから毎年、
私の家にメロンが届くようになりました。

みちこさんがメロン畑に復帰し
ご主人と一緒につくったメロンです。

私は、この体験を通して
人生においてとても大切なことを
教えていただきました。

本気の思いは、相手の心に火をつける。

夢を持つ限り、
人はどんな状況からでも立ち上がれる。

そして、その人らしく生きられる。

私はこの本を通じて、単に相手の心に火をつけ、
やる気にさせるテクニックだけを
お伝えしたいのではありません。

伝わる言葉の根底には、
相手に本当に良くなってほしいと願う、
本気の思いや本気の関わりが必要だということも
お伝えしたいのです。

そうした思いがあってこそ、
生きた言葉として相手の心に火をつけるのです。

たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
たった1分で相手をやる気にさせる話術ペップトーク
浦上大輔 (著)


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